醤油醸造に実際に使用されている酵冠 Z. rouxii S と耐塩性は有さないが通常培地中でこれよりも生育速度の速い酵母 S. cerevisiae O 708-11-16Aとのプロトプラスト融合を行い融合株を得た。融合株のうちから日的とした Z. rouxii S より生育速度が速く, かつ, 同等の耐塩性を有する株が2株得られた。最も生育速度の速かった融合株をXB-101とした。XB-101の性質を調べたところ親株 Z. rouxii S と同等の耐塩性および耐糖性を有し, 親株 S. cerevisiae O 708-11-16Aと同じ薬剤耐性を示した。融合株XB-101は S. cerevisiae O 708-11-16Aがもつ栄養要求性を示さなかった。XB-101の各種炭素源の資化能および発酵能を検討したところ, 親株のどちらか一方でも資化あるいは発酵できる炭素源は資化あるいは発酵が可能であった。FM培地中での発酵試験においてXB-101は親株 Z. rouxii S より優れたエタノール発酵能および糖の消費を示した。また, XB-101を添加し30日間発酵を行った諸味の低沸点香気成分の分析で S. cerevisiae O 708-11-16Aに由来すると考えられる酪酸エチルが検出された。CHEF-DRIIによる染色体DNAの分離の結果, XB-101の染色体DNAのバンドは基本的には親株 Z. rouxii S と同じで, また, もう一方の親株 S. cerevisiae O 708-11-16Aの染色体DNAのバンドの一部をもつことが確認された。