‘甲州’の優良母樹として選抜された8系統を用いて, 1987年から1990年の4年間にわたって,経時的果汁成分変化,マストの分析,ワインの試験醸造の資料から, ワイン用ブドウに適する系統を選抜した。 気象条件によって経時的果汁成分変化に大きな差があり,天候が良好な年には果汁糖度の上昇が順調で,果汁総酸度の減少が急であり,特にリンゴ酸が急減した。天候が不良の年には果汁糖度の上昇が遅く,果汁総酸度の減少も遅く,リンゴ酸の減少が緩やかであった。 10月上旬におけるマスト成分は,天候が良好な年は果汁糖度18度以上,果汁総酸度0.7g/100m l 以下,リンゴ酸含量は低く,天候が不良の年は果汁糖度18度以下,果汁総酸度0.7g/100m l 以上,リンゴ酸含量は高かった。 果汁成分的には,果汁糖度が高く,果汁総酸度が比較的高いME,YU-1,YU-2が推薦できた。 ワインの利き酒結果から,アロマが高く,酸のしっかりしていたME,YU-1が推薦できた。