1. グリセリンを含むみりんを醸造する目的に適う菌株を中国酒やインドネシアのテンペの製造に用いられている Mucor 属および Rhizopus 属に検索し, R.oryzae IFO 4716を米麹中へのグリセリン蓄積に適した菌株として選抜した。 2. 選抜した菌株を用いて, 麹を製造する場合のグリセリンの蓄積を検討した。麹中へのグリセリン蓄積の最適条件は, 90%精白の破砕米を用い, 培養温度33℃~35℃, 酸素濃度10%~15%, pH5~6, および相対湿度90%~95%であった。 3. 選抜した菌株は最適条件下で, 7日間培養した場合, 麹重量当たり6%以上のグリセリンを生産した。このグリセリン生産には, glycerophosphate脱燐酸酵素の関与が大きいと推測された。 4. 選抜した菌株を用いて調製した麹中には, A.oryzae を用いた麹の, 8倍以上のカルバミドが蓄積した。 5. 選抜した菌株をみりん醸造へ利用するためには, グリセリンの生産性改良とカルバミド生成の抑制が必要と考えられた。