マイワシとマアジを氷温貯蔵すると, 4日目で魚臭, 8日目で生臭ささが強くなり, 12日目では刺激臭を生じ食用に向かなくなった。さらに16日目にはほぼ完全に腐敗した。これに発酵液を加えると8日目まで魚臭は感じられず, 以後臭いの変化も12日間は認められず, 刺激臭は25から30口目になって発生した。すなわち, 2倍程度鮮度が長く伸びた。魚肉のK値はどちらの魚肉とも4日目で20程度であり, 8日目で35付近, 12日目以降40を越えた。これに発酵液を添加すると, 8~12日目で20~25で, 20日目でその値は30程度であった。 新鮮なマイワシとマアジ肉のpHはいずれも5.6付近であり, これに2%の発酵液を添加すると, マイワシはpH4.6, マアジはpH4.7と本来のpHから少し酸性側に移行したが, 貯蔵中そのpH値は変化せず, 本発酵液のpHに対する緩衝能は高い。 氷温貯蔵中のマイワシとマアジ肉のTMA量は4日目頃から徐々に増加しはじめ, 30日の貯蔵期間中増加し続けた。この試料に発酵液を添加するとTMAの発生を抑制した。 両魚のPOVはマイワシで16日目, マアジで20日目にピークとなり以後減少したが, これに発酵液を加えると, 2%濃度でPOV値はほとんど増加しなくなり, 添加の効果はTMA増加と同様に顕著であった。これらの実験結果から, 本発酵液は細菌作用と魚肉中の生化学反応を抑えるために鮮度を抑制したと推察した。