有機酸生成の少ないエステル高生産性清酒酵母の育種を目的として, 各種協会酵母より有機酸生成の少ない一倍体株の分離を行い, セルレニン耐性株より得られたカブ獄ン酸エチル高生産性一倍体株との交雑により, 有機酸生成の少ないカブロン酸エチル高生産性清酒酵母の育種を行った。 1. 協会1001泡なし酵母よりランダム胞子解析により, 代表的な清酒酵母である協会7号酵母に比べ, 約半分程度の有機酸生成を示す一倍体酵母K-1001-22を分離した。 2. K-1001-22同士のプロトプラスト融合株のすべてはカプロン酸エチルの生成量が親株の2倍程度に向上したが, 酸生成も親株の協会1001号と同程度に多くなった。 3. K-7号由来のα型一倍体株とK-1001-22との交雑株の胞子解析により得られた有機酸生成の少ない一倍体株 ( MATα ) とカブロン酸エチル高生成能をセルレニン耐性により付与したK-1001-22-2株 ( MATa 型) との交雑により, 香気が高く有機酸生成の少ない酵母の二倍体株を得ることができた。得られた交雑株の試験醸造の結果, 酒母およびもろみの発酵経過は親株とほとんど差異はなく, かつ製成酒の酸度が低く官能的にも芳香の高い清酒が得られた。