低温発酵性ワイン酵母YM-84, YM-126の2菌株の同定及び醸造特性について検討した。供試の2菌株は, S. cerevisiae (biotype, S. nvarm ) に属するホモタリック, 2倍体であると推定された。 YM-84, YM-126の2菌株の低温 (7-10℃) におけるブドウ果汁の発酵は, ワイン酵母OC-2, W3に比べて非常に良好であったが, 中温では緩慢でありエタノールの生成量も少なくなった。また, YM-84, YM426の2菌株ともに, 低温での発酵において高級アルコール, β-フェネチルアルコール及び酢酸β-フェネチルの香気成分及びリンゴ酸を高生成し, 酢酸を低生成する興味深い性質を有していた。供試2菌株の香気成分や有機酸の生成に及ぼす発酵温度の影響を検討したところ, 中温発酵性のワイン酵母OC-2とかなり異なることが判明した。さらに, YM-84, YM-126により生成したワインは, 発酵フレーバーに富み, 切れのよい酒質であることが認められ, 本菌株が白ワイン醸造用酵母として有用であり, 優良なワイン酵母の育種に利用できると考えられた。 終わりにあたり, 本研究の発表を許可されたサッポロワイン (株) 役員各位に厚くお礼を申し上げます。また, G+C含量測定のご指導を賜りました (財) 発酵研究所, 見方洪三郎先生に深く感謝いたします。 本研究の概要は平成3年度日本醗酵工学会大会 (広島) にて発表した。