清酒における導電率の特性を明らかにする目的で純米酒およびアル添酒計81点について, 導電率をはじめとする化学的分析値を変数とした多数量解析を行い, 以下の点を明らかにした。 1. 導電率は多くの化学分析値と有意な相関を示し, 特にアミノ酸度と高い正の相関を示し, 糖含量とは負の相関を示した。導電率は, 多くの化学分析値の総合的な特性を表わす指標の1つであることがわかった。 2. 重回帰分析の結果より, 導電率 (C) は酸度 (A), アミノ酸度 (F) および糖含量 (S) の3つの変数によって次の式に表わされた。 C=68.48 A+246.97 F-49.44 S+337.89 (R=0.81) 3. 導電率を変数として加えた主成分分析の結果では, 導電率が第1主成分で比較的大きな因子負荷量を示し, 第1主成分得点によって大部分の純米酒をアル添と区別することが可能であった。 4. これらの結果より, 清酒の示す導電率の値はアミノ酸, 糖等のバランスの上に成り立ち, 原エキス分由来の濃醇さ・うま味を表わす総合的な指標と推察された。