ワイン酵母Saccharomyces cereuisiae W3 (2n, let) から, 継代的に分離した単胞子株 (F1~F3) の性質をしらべ, 次の結果を得た。 1. 解凍した甲州種ブドウ果汁における低温発酵力を指標とし, 第3世代 (F3) 単胞子株W3-8A-8A-32Aを分離した。この菌株は, 亜硫酸耐性が強化されており, 親株W3より強い低温発酵力を示した。 2. 単胞子株のCHEF電気泳動核型は, 基本的には親株W3と類似していた。しかし, 5本の染色体DNAバンド (Fig.2のバンドA, B, C, D, E) に, 核型の変動が認められた。 3. 特にバンドE (1000kb) は, 亜硫酸耐性を示す単胞子株には必ず認められ, 耐性の強化されたF3単胞子株W3-8A-8A-32Aでは, そのバンドの移動度が低下していた。これらの結果は, ワイン酵母W3の持つ亜硫酸耐性が, この染色体DNAの多型現象と密接に関連していることを強く示唆した。 4. 第1世代 (F1) 及び第2世代 (F2) 単胞子株は, それぞれ再び子のうを形成 (1-10%) し, 四分子分析の結果, いずれの四胞子も Spo+: Spo-=4: 0, a: α: n (non-mater) =0: 0: 4 の分離を示した。このことから, ワイン酵母W3は完全ホモタリズム株 (HO型) であると判定した。 おわりに, 貴重な菌株を分譲いただきました, 大阪大学教授大嶋泰治先生並びに国税庁醸造試験所戸塚昭博士にお札申し上げます。