1.精米歩合35%の白米について, 洗米浸漬によって水の中のカルシウム, マグネシウム, ナトリウムの吸着について検討した。その結果, それぞれのイオンの単溶液では2価イオンのカルシウムとマグネシウムは指数関数的な吸着曲線を示したが, 1価のナトリウムイオンは直線的な吸着曲線を示した。これらのイオンの混合溶液ではナトリウムも同様な指数的な吸着を示し, 吸着量は電荷が高く水和イオン半径の大きいものが高くカルシウム〉マグネシウム〉ナトリウムの順であった。 2.洗米浸漬時間とカルシウムの吸着について検討した。その結果, 水温12℃, 洗米浸漬時間60分で指数関数の式から求めた吸着収束値の99.8%を示し, これを100としたとき, 15分の洗米浸漬時間で約90%の吸着を示した。 3.洗米浸漬水のカルシウム量と白米及び蒸米の吸水率について検討した結果, カルシウム量と吸水率の間に関係は認められなかった。 4.α-アミラーゼによる蒸米の溶解試験の結果, 洗米浸漬水のカルシウムの存在が蒸米の溶解を促進させ, また, 仕込水についても同様の結果が得られた。そして, 洗米浸漬水, 仕込水の両者にカルシウムが存在すると蒸米の溶解は相乗効果によってより高い値を示した。 5.蒸米に対するα-アミラーゼの吸着は仕込初期2目~4日は若干遊離していたものの, 6日目以後はほとんど蒸米に吸着された。 6.α-アミラーゼの蒸米への吸着にも関わらずカルシウムの存在が蒸米の溶解を促進した。これについては, 今後の研究課題である。 7.電子顕微鏡による蒸米の溶解状態の観察結果, 洗米浸漬水, 仕込水にカルシウムを含んだものが, いずれも蒸米の表而がより多孔性になっており, デンプン粒の膨潤も促進されていた。