1. 1968-1993年に製造したカベルネ・ソービニョン赤ワイン17点及びマスカット・ベリーA赤ワイン16点を1.8lガラスボトルに入れ, 15℃で約8ヵ月-25年8ヵ月間貯蔵後, スペクトル分析及び官能検査を行った。 2. 1975-1990年に製造した2種のワイン各14点, 計28点について, ワインのpHあるいはpH < 1でのワインカラー, color density, 色素重合体カラー, color hueを1992年と1994年に測定し, 2年間経過後の変化量を調べた。各色素パラメータの両年の測定値の間で相関係数を求めてみると, いずれのパラメータにおいても高い相関関係が得られ, 熟成の程度の異なる製造年の違うワインでも2年間の色素パラメータの変化の度合はほぼ同じであった。 3. 過剰の亜硫酸添加によりアントシアロンモノマーを脱色して色素重合体カラーを求め, 全アントシアロンカラーに占める色素重合体カラーの割合を算出した。その結果, 1986年以前に製造した熟成したワインの色調は色素重合体カラーに大部分由来し, 1989-1993年の若いワインには明らかにモノマーに由来するカラーが存在した。color hueの分析結果を合わせて考えると, これらの2種のワインは, 少なくても色調に関する限り, 製造後約5年以内にある熟成状態に達すると考えられる。 4. 1981-1990年に製造されたワインの官能検査を行い, その結果と色素パラメータとの関連を調べた。2種のワインともに熟成したワインよりも若いワインの方が官能検査で高い評価を受け, また肉眼で観察した色調 (color) の評価とワインカラー, color desity, 色素重合体カラー, overall qualityなどのパラメータと密接な相関がみられた。 以上の結果, 赤ワインの品質を評価するにあたって, 肉眼的にワインの色調を観察することと簡単なスペクトル分析により色素パラメータを測定することは, 単にワインの色調の分析に役立つばかりか, ワインの品質全体を評価するのにきわめて重要であることが分かった。