1. 1968-1993年に製造した17点のカベルネ・ソービニヨン及び16点のマスカット・ベリーA赤ワインのスベクトル分析を行った結果, 1987年より前に製造した熟成ワインの色調のほとんどは色素ポリマーのそれに由来し, それ以後のワインの色調は, アントシアニンモノマー及び色素オリゴマーとポリマーに由来していると考えられた。 2. 上記の赤ワインからアントシアニンモノマーを分離するためにイソアミルアルコールで抽出し, 残った水層の色素カラー (A520) を測定した。水層中に, 特に若いワインの場合, 重亜硫酸塩で脱色され, あるいはより酸性 (pH〈1) にすると赤色強度を増す, 恐らくオリゴマーに相当する色素があった。 3. 赤ワインの各種の色素パラメータの問での相関係数を算出した結果, イソアミルアルコール抽出後に得られた水層中の色素ポリマーカラー, スペクトル分析法でワインから直接に得られた色素ポリマーカラー及び全フェノール含量の間に高い相関関係があった。 4. 若い1992年産ワイン及び熟成した1983年産ワインをイソアミルアルコール抽出後に得られた有機層と水層の色素をセルロース及びシリカゲル薄層クロマトグラフィーで分離した。有機層と水層中の色素の薄層クロマトグラムは基本的に異なり, 有機層からは多くのアントシアニンモノマーと考えられる有色のスポットが分離され, 一方, 水層中にはアントシアニンモノマーに相当するスポットは認められず, 比較的にRf値の低い少数のスポットが観察された。また, 若いワインと熟成したワインに含まれる色素のクロマトグラムにも相違が見られたが, ブドウ品種間には大きな相違はなかった。