1. マスカット・ベリーA果汁及び赤ワインから可溶性タンパク質を硫安塩析によって分離する方法を, タンパク質の純度, 収量及びボリアクリルアミドゲル電気泳動後の染色のしやすさの観点から検討した。その結果, 果汁の場合にはPVPP (1%) とビロ亜硫酸カリウム (二酸化イオウで1g/ l ) で処理したフリーラン果汁に60%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加して沈殿させる方法が, 一方, ワインの場合にはワインを約10倍に濃縮後, 60%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加して沈殿させる方法が最も適当であった。 2. 赤ワインの製造過程の各段階で, 高分子タンニンと結合しにくい溶存タンパク質が存在したっピンク色の果汁からブラッシュワインを製造する間に可溶弄性タンパク質はやや増加したが, 醸し発酵を経て製造した赤ワインのタンパク質量は果汁とワインとであまり変わらなかった。 3. 果汁, ブラッシュワイン (果汁仕込みワイン), 醸し発酵直後のマスト及び赤ワイン中の可溶性タンパク質のアミノ酸組成は類似し, アスパラギン酸, セリン, グリシン, アラニンに富み, 塩基性アミノ酸は少なかった。それらのポリアケリルアミドゲル電気泳動のパターンはほぼ同様であったが, 果汁とプラッシュワインの可溶性ダンパグ質はそれそれ同じ移動度を持つ7本のパンドに分かれ, 各バンドの相対的濃度は2つの試料間で同じであった。一方, 醸し発酵直後のマスト中と赤ワイン中のタンーク質間でも上と同じ移動度を持つ7本のバンドに分かれ, 2つの試料の相当するバンド間の相対的濃度は同様であったが, 果汁や果汁仕込みワインのそれろとは異なった。