清酒醪中や, 製成酒貯蔵中におけるトリプトファンとトリプトファンがアセトアルデヒドと反応して生じる1一methyl-1, 2, 3, 4-tetrahydro-β-carboline-3-carboxylic acid (MTCA) の動向について検討し, 次のような結果を得た。 (1) 醪中では初期のトリプトファン濃度はほとんどゼロに近いが, 発酵経過とともに増加した。製成酒貯蔵中においても引き続き増加するが, 火入れあるいは活性炭処理により増加が停止ないし抑制され, 減少の傾向もみられた。 (2) MTCAは醪中の増加に比べ, 貯蔵中の増加の方が大きく, 特に火入れ及び活性炭処理を行わない場合に顕著な増加を示した。 (3) MTCA生成に及ぼすpH, 温度及び基質濃度の影響を調べた結果, 貯蔵初期におけるトリプトファン濃度の低減がMTCA生成抑制に効果的であることがわかった。 (4) MTCAの生成反応は二次反応であると仮定し, pH4。3, エタノール濃度20%の条件下で, 反応速度論的解析を行った結果, 反応速度係数, 4, 817.4×e (-3, 470/T), Arrhenius活性化エネルギー, 6, 891.4 (ca1/mo1) を得た。