味醂中に旨味成分であるGluを増強するために, Glu高蓄積菌株を検索し, 味醂製造への利用を試み, 次の成果を得た。 (1) Glu高蓄積菌株を, 実用菌株82株中に検索し, アルコール存在下で蒸し編米を可溶化し, Glu生成量の多い菌株8株を選抜した。 (2) この8株による麹を用いて試醸した味醂のうち, A. oryzae IFO 4250または4251株による麹を使用した味醂中のGlu含量は, それぞれ A. oryzae TM株による麹を使用した味醂の2.0倍, 1.5倍であり, その全窒素量及びアミノ酸量は1.5倍及び約1.3倍であった。 (3) 両株を用いた味醂中にGlu生成量が多い理由は, IFO 4250及び4251株のACPase及びグルタミナーゼ活性が, アルコール存在下で, それぞれTM株の約1.2倍及び3-4倍と高いことによると考えられた。 (4) 両株を用いた麹の酵素は, アルコール存在下でTM株の場合と比較して, 米中のWSP, WISP及びPB-Iを, よく可溶化し, アミノ酸及びGluを多く生成した。 (5) PB-Iの可溶化率は, WSP及びWISPと比較して低かったが, 還元剤処理により向上した。IFO 4250株を用いる麹酵素によるPB-Iの可溶化率は, 無処理で7%であったが, グルタチオンによる還元処理で約50%に向上し, 遊離アミノ酸も多く生成し, 特にプロリン生成量が大であった。