エチジウムブロマイド (EB) と高温培養の組み合わせにより耐塩性酵母の呼吸欠損変異株の取得を試み, 20-50mg/ l のEB添加と40℃培養により変異株RMM-71, 72, 73を得た。変異株は単一炭素源としてグリセリンを使用した培地に生育せず, チトクローム a + a 3を欠失した呼吸欠損性を示んた。また, 変異株は親株に比べ増殖速度が低下し, 高温や低温域での増殖の遅延が著しくなる傾向を示した。特に, RMM-71, 73株は低温に対して感受性が高まり, 発酵力や生育力が減少した。耐塩性に関しては親株, 変異株ともに同等であったが, エタノール耐性は変異株に低下傾向がみられ, 特に, RMM-71, 73株にかなりの低下を認めた。変異株の麦味噌中での発酵力は親株より必ずしも劣っている訳ではないが, 生存率に差異が認められ, RMM-71, 73株が早く死滅する傾向にあった。味噌の防湧試験ではRMM-73株を用いた味噌が最も安定で, 次いでRMM-71となり, 親株による味噌に比べていずれも20℃や15℃における安定性が向上しており, 保存性改善効果があった。味噌中においてRMM-73株は, 特に, 親株よりエタノール耐性が低下し, 約0.4%低かった。また, 味噌中でのRMM-71, 73株の死滅の速さには, そのエタノール耐性の関与が予想された。