化学独立栄養性の硫黄酸化細菌の一種である T.thi-ooxidans を利用して, 高濃度の亜硫酸を含むブドウ果汁から亜硫酸を除去するための検討を行った。本菌は遊離型 (f-SO2) および結合型亜硫酸 (b-SO2) の両方を酸化することが可能であった。結合型亜硫酸の酸化活性はpHが3.5-5.5の範囲において認められ, 最適pHは4.5であった。遊離型は, pH4.5-6.5の範囲において活性が認められ, 最適pHは5.5であった。本菌の亜硫酸酸化活性は果汁中の主要成分であるグルコースや有機酸 (クエン酸, 酒石酸, リンゴ酸) によってほとんど阻害されなかった。ブドウ果汁からの亜硫酸の除去は, 果汁のpHが4.5-5.5の範囲において可能であることが分かった。このとき, pH調整による色調の変化は見られなかった。pHを4.5に調整した果汁では, 高濃度の亜硫酸 (1,000ppm-SO2) が, 3.5時間でほぼ完全に除去できた。亜硫酸除去処理前後の還元糖およびクエン酸, 酒石酸, リンゴ酸量を比較したところ, 差は認められなかった。これより, T.thiooxidans 菌体により果汁中に高濃度に含まれる亜硫酸が主要成分を変化させることなく除去されたことが示された。