清酒酵母より突然変異法によりセルレニン耐性株を分離したところ, 発酵特性の異なる2株が得られた。NoA9株は発酵力が強く, セルレニン耐性は中程度, カプロン酸エチル生成力は親株の5倍程度, No, 24株は発酵力は弱いが, セルレニン耐性は強く, カプロン酸エチルを親株の10倍程度生成した。これらの株の遺伝解析を行ったところ, No.19株では脂肪酸合成酵素のα一サブユニットをコードするFAS2遺伝子にヘテロ型の変異が, また, No.24株ではホモ型の変異が起こっていることが明らかとなった。このことから, No.24株は, ホモ型変異によって, より強いセルレニン耐性とカプロン酸エチル生産性を獲得したもの配考クられる。 そこで, ヘテロ型変異株と同等の強い発酵力を持ち, ホモ型変異株と同等の高いカプロン酸エチル生産性を持つ株を取得することを目的に, 遺伝子組換え技術を応用し, 変異型FAS2遺伝子を野生型の清酒酵母に導入した。その結果, 目的とする優良株が取得できた。 さらに, 今回得られたホモ型変異株と形質転換株の白糠焼酎への応用を試みたところ, これらの株は白糠焼酎膠において充分な発酵力と, 高いカブロン酸エチル生産性を示し, フルーティーな香気を有する特徴ある焼酎が製成できた。