秋田県産の酒造好適米「吟の精」について, 心白が吸水性・消化性に与える影響を検討するため, 心白部分の画像解析と走査型電子顕微鏡 (SEM) による観察を行ない, さらに吸水性, 消化性について検討した。 (1) 吟の精には, 外観上見えにくい心白 (潜在的な心白) が存在し, 流動パラフィン処理によって明瞭な心白群に入ることが確認された。 (2) 心白部分をSEMで観察したところ, 明瞭な心白部分は亀裂, 溝の空隙部分にデンプン単粒が多く観察されたが, 潜在的な心白部分にはデンプン単粒は観察されず, 丸みのあるデンプン複粒が並んでおり, デンプン複粒間に空隙のある構造を持っていた。 (3) 玄米で心白粒と無白粒に分別した精米歩合70%白米について吸水性, 消化性を比較したところ, 心白粒が無白粒より吸水速度が大きく, 消化性が良かったが, 無白粒と心白粒の差は, 吟の精では, 山田錦, 美山錦ほど大きくなく, 無白粒に存在する潜在的な心白が吸水性, 消化性に影響を与えているものと考えられた。 終わりに, この研究は, 秋田県の酒米開発事業の中で行われたものであり, 共同研究者である秋田県酒造組合酒造技術研究委員会の方々, 秋田県農業試験場の加藤武光氏, 真崎聡氏, 畠山俊彦氏, ご指導頂きました国税庁醸造研究所石川雄章先生, 岩野君夫先生, 佐無田隆先生に深謝致します。そして, 心白の分析で尽力して頂いた田口トモ子さんに感謝致します。 本研究の概要は平成9年度日本醸造学会にて発表した。