1.接合性変異株の分離を目的としたプラスミドを応用して, 協会7号をはじめ4株の清酒酵母を原株として接合性変異株を得た。 2.これらの分離株に遺伝学研究用の一倍体酵母3株を加えて, 通常の有性的交配法により13株の四倍体および8株の三倍体と見られる交配株を分離した。胞子形成能の検討および電気泳動核型分析によりそれらの雑種性を調べ, 17株は明らかに交配株と判定された。 3.これら雑種性に疑念の残る4株も含めて, 交配株とその原株および接合性変異株について, 疑似清酒醪を用いて発酵力を調べたが, 協会7号および9号を凌駕する株は得られなかった。しかし, 疑似醪の香味についてさまざまな変化が認められた。 4.疑似清酒醪についての発酵試験の結果から5株の交配株を選び, 協会901号および供試原株の1株であるIB36株を対照に, 総米1kg規模の試験醸造に供した。交配株の発酵力は一般に弱く, 対照株に勝る株は存在しなかった。しかし発酵醪についての官能審査では, 1・2の株に興味が持たれ, 本交配法による優良株育種の可能性が示唆された。