吟醸酒の酒質と膠中の酵母密度に関する知見を得るため, 酵母密度を重層法により測定したところ, 留後20日目においては, 1g当たり5,600万個から2億6千万個と大きな差が見られた。成分分析値, 官能評価及び膠経過についての各項目間の相関係数を求めたところ, 20日目酵母密度と最高温度, 最高温度到達日数, 酸度, 渋味との間には, 負の相関が見られた。渋味の強弱についてのt検定の結果から, 渋みの強い酒は, 酵母密度が少なく, 糖化力が強く, 膠日数が長く, 製成酒の日本酒度が小さいという結果となった。これらのことは, 渋味は膠中の酵母が不足した場合に増えるという予想と一致した。