酒造原料米のタンパク質の溶解性を, 掛米品種間での差異と醪経過の面から検討した。 (1) 掛米品種の異なる小仕込醪において, プロテインボディ1 (PB-1) の溶解性には品種間差がみられたが, プロテインボディII (PB-II) では, すべての品種で, 90%以上が溶解され, 液相に移行した。 (2) 小仕込原料, 酒粕, 上槽酒成分との相関分析の結果, 原料PB-1量が多いほど, 仕込における蒸米吸水率が低いことが明らかになった。また, 酒粕に残存するPB-1量の多い品種ほど, 上槽酒のアルコール度数およびアルコール収得量が少なくなった。 (3) 小仕込原料および酒粕の組成タンパク質量に基づく因子分析の結果から, 組成タンパク質量と液相への移行量に関する特性を軸として, 原料米品種の特徴付けを行った。 (4) 醪経過におけるタンパク質の推移について検討した。PB-IIの多くが, 醪初期から溶解されるのに対し, PB-1および他の構成タンパク質は, 醪初期には溶解が進みにくく, 中期から末期にかけて, 溶解が進むことが示唆された。