1.低温発酵における並行複発酵及び製成酒の品質に及ぼす温度の影響について、7℃ 、10℃, 13QCの小仕込試験を行い調べたところ, 低温発酵は酸の生成とイソアミルアルコールの生成を抑え, 酢酸イソアミルとの比であるE/A比を向上させるが, 蒸米の溶解率が極端に低下し, 溶解が糖化と発酵を律速していることが明らかとなった。 2.10QCの発酵温度において、蒸米の溶解率を高めることを目的として種々の市販酵素剤の添加効果を調べた結果, α-アミラーゼ, グルコアミラーゼ, 酸性プロテアーゼの他に酸性ホスファターゼ剤とリパーゼ剤を配合することにより, 低温発酵における蒸米溶解を麹使用時と同等にすることが出来た。 3.α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ, 酸性プロテアーゼ, 酸性ホスファターゼ及びリパーゼを配合した酵素剤を用いた低温発酵による製成酒は, 粕歩合が低いにもかかわらず通常の吟醸麹を用いた製成酒に比べてほぼ同等の官能評価が得られた。 終わりに, 本研究は国税庁醸造試験場第5研究室及び国税庁醸造研究所酵素工学研究室において実施した研究の成果をまとめたものであり, 在籍した研修生及び講習生の皆様に厚く御礼を申し上げます。