味噌, 醤油諸味にひろく分布し, 24-26%の食塩下でも, 旺盛に増殖・発酵を営む耐塩性酵母がZygosaccharomycesrouxiiである。この酵母がかような高濃度の食塩環境に耐えられる理由, つまり, 耐塩性の機作については, 細胞膜脂質組成の変化によるNa+の膜透過性の低下, 適合溶質 (ポリオール) の蓄積による浸透圧調節, さらには, 細胞膜プロトンポンプの関与でNa+を細胞外へ排出して, 細胞内塩濃度の調節など種々明らかにされている。長年, 耐塩性酵母の耐塩性で重要と考えられる「ナトリウム排出」と「浸透圧調節」の機構について, とくに遺伝子面を含めての研究を進展して来られた筆者に, 詳細な解説をいただいた。