麦味噌は田舎味噌とも呼ばれ, 古くから農家のつくる自家醸味噌の多くが麦を主原料としたからである。九州全域と沖縄県, 愛媛県と四国の西部, 中国地方の山口県などと, 関東では埼玉・栃木県の一部に限ってつくられる。麦原料に由来する独特の風味と色調が根強い地方的嗜好として受け継がれている。麦味噌原料の麦 (大麦, 裸麦) は, 米とは違い, 蛋白質, 食物繊維が多いなどの特徴を有し, これが製品の特性に影響を及ぼす。例えば, 醤油の特徴香といわれる4GEなどのアルキルフェノール類は, 麹の働きによって, 小麦のリグニンから生成したフェルラ酸などのフェノール成分から Candida 属酵母の作用により生成される。 筆者らは, 大麦に特徴的な物質変化の解明をすすめることで, 麦味噌の特性を明らかにすることを企図され, 一連の研究を進められている。まず, 今回は, 穀類のフェルラ酸に関する知見と併せ, 麦味噌および大麦麹のフェルラ酸と, 抗酸化活性について, 詳細に解説いただいた。