酢酸イソアミル生成能の高いTFL耐性株よりα-イソプロピルリンゴ酸合成酵素をコードする LEU4 遺伝子を抽出し,変異点を解析した結果,グリシン516がアスパラギン酸に変化した点変異であることを明らかにした。この変異型 LEU4 遺伝子を野生型清酒酵母に導入することにより酢酸イソアミルの生成量を親株の6倍にまで高めることができた。また,変異部位のアミノ酸残基の変化が香気生成能に及ぼす影響について検討するため,バリン型,アラニン型,セリン型,アスパラギン型変異のα-イソプロピルリンゴ酸合成酵素を作製し,野生型清酒酵母に導入した。その結果,アスパラギン酸型以外の変異でもTFL耐性を示し,イソアミルアルコールと酢酸イソアミルの生成能が高められた株が得られた。また,各種変異型および野生型 LEU4 遺伝子の大腸菌高発現株を作成し,α-イソプロピルリンゴ酸合成酵素活性を測定した結果,酵素活性は変異型により強さが異なったが,ロイシンによるフィードバック阻害はいずれの変異型においても解除されていた。また,酵母には存在しないロイシンからα-ケトイソカプロン酸への反応を触媒する B. sphaericus のロイシン脱水素酵素を清酒酵母に導入したが,イソアミルアルコールや酢酸イソアミルの生成量にはあまり変化がなかった。