糖-アミノ酸系のメイラード反応生成物 (MRP) をモデル的に作出し, アンギオテンシン変換酵素 (ACE) に対する阻害活性の検討を行った。 1) 16種類のアミノ酸とグルコース或いはキシロースの組み合わせにより作出したMRPのうち, ヒスチジン, アルギニン, システイン, ロイシン, イソロイシン, スレオニンに強いACE阻害活性が検出された。塩基性アミノ酸より生成したMRPは, 全体的に比較的強いACE阻害能を示した。ACE阻害活性と着色度の間には特に相関は無かった。 2) ヒスチジンーグルコース系MRPにおいていくつかの検討を行った。ACE阻害活性を示すMRPはどの初発pHにおいても生成し, pH5-11にかけて強い阻害能が見られた。また, MRPのACE阻害能は反応時のアミノ酸濃度に依存するという傾向が観察された。Sephadex G-25カラムクロマトグラフィーで生成MRPの分画を行ったところ, ACE阻害能を示すMRPは広範囲の分子量分布を示した。また, 着色の少ない画分にも強いACE阻害活性が検出され, 着色と阻害活性の間には相関が認められなかった。各種金属イオンを添加して, それらのMRPのACE阻害能に対する影響を検討したところ, 亜鉛イオンの添加により阻害能は著しく減少することから, 本MRPがACE活性中心の亜鉛と特異的に作用することによりACEを阻害していることが示唆された。pH4, 7, 9においてMRP生成の経時変化に伴うACE阻害活性の検討を行ったところ, それぞれのpHでACE阻害能の経時変化は異なり, 特にpH7, 9において, 反応開始直後にいったん急激に阻害活性が上昇するという特徴的なパターンを示した。いずれのpH, いずれの反応時間で生成したMRPも亜鉛イオンの添加によりACE阻害能が低下した。