食経験のある安全で安心な醸造微生物である日本酒の “きもと” 由来の低温生育性乳酸菌L.sakeiと乳酸資化性を有するビール酵母S.cervisiaeを用い, 10℃ という低温下で生地を発酵させ, 安定なサワー種を調製することに成功した.このサワー種による新規なサワーブレッドの開発において, 乳酸菌が製パンに果たす役割について明らかにするとともにヘテロ発酵型乳酸菌を併用して本格的なサワーブレッドの製造に成功した。 (1) 低温生育性乳酸菌L.sakeiを含む乳酸菌添加パンの最適生地発酵時間は, 25℃, 18時間であることを認めた。この時, パン生地のpHは3.9まで低下し, TTAは8.8であった。この値は乳酸菌無添加生地に比べ約5倍であった。 (2) 乳酸菌無添加パン生地に比し, 乳酸菌添加生地ではガス発生量が57%に低下し, さらにパン容積55%, 高さ70%と生地物性の低下を示す低い値となった。 (3) 酢酸/乳酸の比が約0.2と, 典型的なサワーブレッドの酸味を有するものが得られた (4) パン生地及びパン中の全遊離アミノ酸量は, 乳酸菌の添加により増加した。特に, 各種の呈味に関与するアラニン, グルタミン酸, グリシン, アスパラギン酸, ロイシン等のアミノ酸が増加し, サワーブレッドのおいしさ向上に貢献していることが示唆された。 (5) 食経験のある既知の醸造微生物を主体とする安全・安心なほどよい酸味の, おいしいサワーブレッドの製造方法を確立した。