白米の浸漬水に海洋深層水を添加し, 製麹を行った際の麹酵素活性への影響を検討した。 1. 深層水を白米の浸漬水に添加すると, その添加量に比例して浸漬時間が長くなった。 2. シャーレ法及び麹蓋法による製麹試験において, 50%深層水区までは対照に比べ糖化力, α-アミラーゼ活性が上がり, 逆に酸性カルボキシペプチダーゼは低く抑えられた。 3. 麹蓋法で製麹した麹を用い, 清酒小仕込み試験を行った結果, 25%, 50%深層水区では対照に比べ純アルコール収得量が増加し, 膠の溶解が促進された。また, 深層水区では酵母死滅率が軽減され, 全菌数が多くなった。香気成分では深層水区でイソブタノール, イソアミルアルコール, 酢酸イソアミルが増加した。 4. 25%, 50%深層水区の麹を用いて麹歩合を減らした仕込みを行った結果, 麹歩合を15.6%まで減らしても対照麹を19.5%使用した場合とほぼ同等の純アルコール収得量が得られ, 酸度, アミノ酸度は相当低く抑えられた。麹歩合を減らしても, イソアミルアルコールや酢酸イソアミルは対照より高くなった。カプロン酸エチルは麹歩合を低くするに従い増加した。 5. 自動製麹装置を用いて品温経過を同一とした製麹試験を行った結果, グルコアミラーゼ, 鐸一アミラーゼは25%, 50%深層水区で活性が高くなったが, 酸性カルボキシペプチダーゼは低くならなかった。50%深層水-高温経過区による製麹試験により深層水麹の酸性カルボキシペプチダーゼが低くなるのは中温区の通過時間が短いことに起因することが示された。