1.酒母における酵母の増殖を想定して,麹抽出液培地を用いて酵母の増殖におけるアミノ酸取込み量を調べたところ,取込み量の多いグループAにグルタミン,リジン,スレオニン,メチオニン,アスパラギン酸,アルギニン,ロイシン,アスパラギンが,取込み量が中程度のグループBにセリン,トリプトファン,フェニルアラニン,グルタミン酸,イソロイシン,ヒスチジン,システイン,バリン,チロシンが,取込みせずに逆に放出するグループCにはGABA,アラニン,プロリン,グリシンが分類された。 2.清酒の呈味に関係しているアラニン,アルギニン,グルタミン酸,アスパラギン酸についてみると,アルギニンとアスパラギン酸は酵母の取込み量が多いアミノ酸(グループA)で麹からの持込み量が多いアルギニンは酵母の最大取込み量を上回る場合があり得る。グルタミン酸は取込み量が少ないアミノ酸(グループB)のため麹からの持込み量が製成酒のグルタミン酸含有量に密接に関係している。アラニンは酵母が放出するアミノ酸(グループC)であり麹からの持込み量がそのまま製成酒の含有量に上乗せになるアミノ酸であった。 3.酵母の増殖が終了した段階ではアミノ酸取込み量は僅かであり,酵母のアミノ酸取込みは主に増殖の窒素源として利用される。 最後に本研究に当たり奨学寄附金を頂戴した秋田県酒造組合様,貴重なアドバイスを頂きました山梨大学飯村穣教授,日本醸造協会吉田清上席技師に厚くお礼を申し上げます。