トリコセシン耐性株の中からリンゴ酸高生産酵母 (M7-14) のエチルアルコール生成能が改善された株 (M 7 T 65) を取得し, 清酒の小仕込み試験を行った。このM 7 T 65のエチルアルコールの生成に関する酵素活性や遺伝子の発現量を調べ以下の結果を得た。 1) トリコセシン耐性株87株の中からエチルアルコール生成能が高くなった7株を得た。 2) 清酒の小仕込み試験の結果, リンゴ酸の生成はM7-14の約90%で, エチルアルコールの生成がK-7と同程度の株M 7 T 65を取得した。 3) エチルアルコール耐性はM7-14より低下し, エチルアルコール耐性は認められなかった。 4) アルコールデヒドロゲナーゼ活性やピルベートデカルボキシラーゼ活性は, K-7と同程度までに増強されていた。 5) M 7 T 65のADH1, ADH2 は2.0倍, ADH5は1.2倍にM7-14より発現量が増加していた。 6) M 7 T 65のMDH1, MDE2の発現量はK-7より多く, リンゴ酸高生産能は保持されていた。 7) M 7 T 65のエチルアルコール生成能の改善は, アルコールデヒドロゲナーゼの遺伝子が高発現し, それに伴い, 酵素活性も増強されたためと結論した。