小豆全粒粉を食品素材として活用する目的で, 小豆全粒粉素材 (A : 無処理粉, B : Aを超音波併用の蒸留水15分間処理, C : Aを蒸留水の浸漬16時間処理)の性状評価とその素材の添加がクッキーの品質に与える影響について検討した。 (1) 小豆全粒粉の歩留りは平均85.0%で小麦粉に比べ保水力が3.3倍, 吸油力が1.6倍であり, たんぱく質, 食物繊維, 無機成分の含量は小麦粉より多かった。SEMの観察では素材Bは素材Aに比べて, 小豆の粒子の澱粉が糊化されやすい状態を示し, 超音波処理の効果が観察された。素材Aを超音波処理した素材Bは色調の赤みが若干強くなり, 成分含量は照射により多少損失するもののペースト状態で, 新規食品素材として有用であることを示唆していた。 (2) クッキーは素材A, B, Cを小麦粉の20%まで置換できた。素材B20%添加製品は無添加製品に比べて, 小豆色を帯び, スプレッドファクターと吸水率は有意に大きくなり, 物性の破断応力値は小さかった。官能評価では味は小豆の微妙な香味を感じ, 総合評価で, 無添加製品より好まれた ( p <0.05)。 (3) クッキーは20℃の暗所 (0Lx), 明所 (1,500Lx) と50℃一定温度で86日間保存中のPOVでは, 暗所保存は, 無添加, 素材A, Bの20%添加ともにPOVの上昇は認められなかった。明所 (1,500Lx) と50℃保存では, 上昇を認めたが, 食品衛生法の上限値30meq/kgまでには至らず, 油脂の変敗は認められなく, 殊に素材A, Bの20%添加は無添加より酸化が抑制された。従って素材B20%添加がクッキーに対する品質改良を認めた。