Staphylococcus 属菌及び Streptococcus 属菌はPETボトル入り清涼飲料水中でも長時間の生存が可能な場合がある。そこで,これらの中で口腔内に常在していることの多い S.aureus と S.pyogenes の一定濃度の菌液を調製し, 菌数の変動を検討した。 (1) S.aureus と S.pyogenes を接種した実験において, スポーツ飲料と乳酸菌飲料では S.aureus では菌数の変化が見られなかったが, S.pyogenes は5時間後までに死滅した。 (2) むぎ茶飲料では S.aureus は増加し, S.pyogenes はわずかな減少を示した。 (3) 紅茶飲料 (ミルクティ) は両菌種ともに増加した。 (4) スポーツ飲料と乳酸菌飲料はpH3, むぎ茶飲料と紅茶飲料 (ミルクティ) はpH6程度であるため, 細菌の生存には成分も影響するが, pHの方がより強く影響することが示唆された。 (5) むぎ茶飲料と紅茶飲料 (ミルクティ) との比較では, むぎ茶飲料はタンパク質, 脂質, 炭水化物を全く含まず, 原材料が麦の浸出液のみである。これに対し, 紅茶飲料 (ミルクティ) は乳成分 (牛乳, 脱脂粉乳など) や砂糖を含むため, 細菌の増殖に適した条件であると言える。 (6) 黄色ブドウ球菌食中毒が発症するエンテロトキシン量は平均100~200ngとされる。これは, 食品中における S.aureus が106cfu/g以上と同レベルの増殖である。本研究の紅茶飲料 (ミルクティ) では, 接種24時間後でもっとも増殖した試料でも104cfu/mL程度である。このためエンテロトキシンが産生される条件に満たなかったと考えられた。