ケアハウスおよび養護老人ホームに入居中の,健康な65歳以上の男性8人,女性19人,合計27人を対象とし,連続3日間の食事調査を行い,同時に摂取した食事サンプルの分析値から,Seの摂取量 (実測値) を推定した。 食事調査のエネルギーおよび栄養素摂取量の計算値の平均値は,男女とも多くの栄養素が食事摂取基準 (身体活動レベルI,70歳以上) の推奨量,目安量等を満たしていた。しかし,個人別にみるとカルシウム,マグネシウム,亜鉛,ビタミンA,ビタミンB2,ビタミンC,食物繊維は推奨量および目安量等の水準に達していない者が多くみられた。また,実測Se摂取量,摂取エネルギー1,000kcal当たりおよび基準体重1kg当たりのSe摂取量はその推奨量を満たしており,不足の可能性は低いと考えられたが,個人差が大きく,食事摂取量の少ない高齢者ではSe摂取量が低い傾向がみられた。また,全Se摂取量の約40%が魚類を主にした料理に依存していた。栄養有効性を考慮するとSeの栄養状態が危惧される。