マスタードオイルは, ネパールで最も一般的な調理油である。マスタードオイルには, エルカ酸が含まれているが, このエルカ酸は, 脂質代謝異常や心筋線維症を引き起こすことが報告されている。これまで多くの研究者が, マスタードオイルの栄養試験を行う際, その含有量をエネルギー比で20%もしくは50%で行ってきたが, ほとんどのネパール人はそのような大量の脂質を消費しているわけではない。そこで本研究では, 一般のネパール人の脂肪エネルギー比率である12%のマスタードオイルを, 4週齢SDラットに4週間摂取させ, マスタードオイルが血清, 肝臓, 糞, 心臓に及ぼす影響について, 生化学的な解析を行った。同比率の大豆油摂取群をコントロールとした。その結果, マスタードオイルは, 心臓において有意ではないがわずかな脂質の蓄積が観察された。脂肪酸組成を検討した結果, エルカ酸は60%以上が排泄されていた。また, マスタードオイル摂取によってコレステロール, 総脂質量, 中性脂肪の量が血清中では増加していたものの, 肝臓では減少していた。さらにマスタードオイル摂取によって糞中へのコレステロール排泄や総脂質量が高く, 一方胆汁酸量は低かった。