近年, 日本においては, 若者の朝食欠食率の高さや野菜摂取量の不足が顕在化している。そこで, 本研究では, トランスセオレティカル・モデルの要である行動変容ステージに基づいて, 大学生の食の実態および課題を把握するとともに, 健全な食生活を促す介入のための示唆を得ることを目的とした。調査対象者は, 平均年齢19.8±1.28歳の大学生268名であった。 質問紙調査の結果は以下のとおりである; (1) 調査対象者のうち, 約半数 (48.1%) が, 下位 (無関心期, 関心期) の行動変容ステージであった。 (2) 下位ステージの者は, 上位 (実行期, 維持期) のステージの者と比べて, 朝食欠食率が高く, 食事バランスが悪かった。 (3) 下位ステージの者は, 栄養バランスを気づかっておらず, 自身の食生活に問題があるとあまり自覚していなかった。 (4) 下位ステージの者は, 上位ステージの者よりも, 精神面での倦怠感を強く感じていた。 (5) 下位ステージの者は, 上位ステージの者よりも, 調理に対する意欲・興味, 調理技能, そして調理知識が低かった。 行動変容ステージに基づいて対象者を分類することは, 介入のターゲットを絞るのに有用である。本研究から, 食に関する問題を抱えた下位ステージの者は, 上位ステージの者より健全な食生活を実践するコンピテンスが低いことが明らかになった。今後は, TTMに基づいて下位の行動変容ステージにある大学生のステージ・アップを促すような食教育プログラムを開発・適用し, 健康的な食生活の実現・定着を図ることが必要である。