福島県いわき市の「市の魚」に制定されたメヒカリは, 青森から鹿児島県にいたる大陸棚の比較的深いところに分布している小型魚で, 肉質は白身であり魚肉, 骨ともに脆弱であることから魚体全体を食されることが多い。そこで, 漁獲海域の異なるメヒカリ (愛知県産, 宮崎県産, 常磐沖産) を用いて, メヒカリ (魚体全体) の栄養成分について検討した。 (1) 水分は66. 6~75. 2%, タンパク質は14. 2~15. 8%, 脂質は5. 4~14. 9%, 灰分は2. 6~3. 6%で, 特に脂質含量は漁獲海域により変動が見られた。 (2) 制限アミノ酸はトリプトファンで, アミノ酸スコアは83であった。 (3) 主要な遊離アミノ酸はLys, Tau, Ala, Leu, Gluであったが, 遊離アミノ酸総量は漁獲海域により差が見られた。Tauは, 他のアミノ酸に比べて調理による変動が大きかった。 (4) 脂肪中の主な脂肪酸組成は, C16 : 0が約24%, C18 : 1が約42%, C20 : 5 (EPA) が約6%, C22 : 6 (DHA) が約9%で, C18 : 1の割合が高かった。 (5) 魚体全体に対して, 頭と内臓を除去することによりコレステロールとタウリンの含量はそれぞれ低下した。