特別養護老人ホームの高齢入所者にしばしば見られる貧血を解析するため, 二か所の特別養護老人ホームにおいて, 平均年齢87歳 (62-101歳) の女性97名のBody mass index (BMI) と計算による基礎代謝量 (BMR), 末梢血液検査および血清生化学的検査を調べた。BMIにより被験者数を5区分に分け, BMI区分 (最小値から最大値までの5区分Q1~Q5) と貧血の病態との関連性を調べた。Q5 (BMI 20. 9-26. 4) のBMRはQ1~Q4 (BMI 12. 7-20. 8) に比べて有意に高値を示した。 ヘモグロビン濃度11. 0 g/dL未満の貧血者は41人 (42%) みられた。Q5においてのみ, 貧血の有病率が有意に低値であった。小球性低色素性貧血は, 97名の全被験者に認めなかった。正球性正色素性貧血 (NNA) は26人 (27%), 大球性正色素性貧血 (MNA) は15人 (15%) にみられた。NNAの有病率は, いずれのBMI区分においも差はみられなかったが, MNAの有病率は, 上の2区分で低くなっていた。すなわちMNAの有病率が標準体格者あるいは肥満者において低くなることを示した。 貧血の有病率はBMI 19. 5未満で52%, 19. 5以上で28%であった。BMI 19. 5未満でNNAが28%, MNAが24%, 一方, BMI 19. 5以上ではNNAが26%, MNAが3%であった。MNA はBMI 19. 5以上で低率であった。BMI 18. 5を境界にすると有意差を認めなかった。これらの結果から, BMIは施設入所高齢女性の貧血を予測するための栄養評価指標として使用でき, またBMI 19. 5以下はMNAを予防するために早期に栄養処方を実施するための判別値となる。