本研究は「親子で行う調理習慣が子どもの認知機能に良い影響を与える」ということを実証する目的で行った。 研究方法として, 親子調理による生活介入実験, ならびに近赤外線計測装置による親子調理中の脳活動の計測実験を行った。生活介入実験では, 29組の小学生とその親を, 介入群 (子ども16人, 平均年齢8. 9歳) と対照群 (子ども13人, 平均年齢8. 8歳) の二組に分け, 介入群に対して3ヶ月にわたり, 調理習慣導入のための生活介入を行った。介入前後の脳機能検査は, 8種の検査から構成した。脳機能検査の得点の変化についてpaired t-testを用いて統計的検定を行い, さらに前後の変化値の群間差の統計決定として, 検査ごとに分散分析を行った。計測実験では, 被験者である8人の子ども (平均年齢10. 3歳) は, 背外側前頭前野をカバーする頭部にプローブを装着し, ガスコンロを使ってホットケーキを焼き, 盛り付けるという調理中の脳活動の計測を行った。 その結果, 生活介入実験では, 調理の生活介入を行った子どもで, 概念課題において明らかに有意に検査値の上昇がみられた。さらに概念課題, 二次元回転課題の変化値の群間差に統計的な有意差が認められた。計測実験では, ホットケーキを焼く, 盛り付けるという各手順において, 全ての被験者の左右の大脳半球の背外側前頭前野の活性化が確認された。本研究では, 親子で行う調理習慣が子どもの認知機能に良い影響を与えることが実証された。 従来の知見や脳科学の先行研究, 本研究結果から, 親子で行う調理が子どものさまざまな脳機能を発達させる可能性があらためて示唆されたといえる。