本研究は「親子で行う調理習慣が親の認知機能等に良い影響を与える」ということを実証する目的で行った。 研究方法として, 親子調理による生活介入実験ならびに近赤外線計測装置による親子調理中の親の脳活動の計測を行った。介入実験では, 小学生の子どもと一緒に参加した親を被験者とし, 介入群 (大人16人, 平均年齢39. 9歳), 対照群 (大人12人, 平均年齢38. 8歳) の2組に分け, 介入群親子に対して, 3か月にわたり調理習慣導入の生活介入を行い, 介入前後に8種の脳機能検査を実施した。脳機能検査の得点の変化について t -検定を行い, さらに前後の変化値の群間差の統計決定として, 検査ごとに分散分析を行った。その結果, 調理の生活介入を行った親では, 2-D課題, マッチング課題において明らかに有意に検査値の上昇がみられた。しかし前報の子どもの結果でみられた変化値の群間差の統計的な有意差は, 親では認められなかった。これは, 対照群の親も日常的に調理を行っていることによる影響ではないかと考えられた。 近赤外線計測装置による親子調理中の親の脳活動の計測では, 小学生の子どもと参加した親 (母親9名, 平均年齢37. 9歳) を被験者とし「トマトをあぶる」「タマネギを炒める」「ガスコンロによる炊飯」の3つの調理を行った。3つの調理において, すべての被験者の左右の大脳半球の背外側前頭前野の活性化が確認された。 期間中のインタビューでは, 参加した子どもから前向きな意見が聞かれ, 親からは親子調理を通じて子どもの成長を実感する機会が増えたという声が寄せられ, 親が子育ての達成感から自己効力感を得ることができたと考えられた。 親子で一緒に調理に取り組むことは, 親の脳機能への良い影響や子育ての充実感を高めることが期待されると考えられた。