韓国と日本は地域的な関係から, 気候風土が近似しているだけでなく, 食文化面についても, 両国は中国からの影響を受けるなど, 歴史的にも多くの関わりをもってきた。著者は, 韓国と日本の食事について, 食材, 調理法, 食嗜好, 各国の料理に対するイメージなどの点から比較してきた。本研究は, キムチ以外の料理について, 嗜好面からの検討を加えるもので, 韓国料理を日本人が試食し, 日本料理を韓国人が試食してそれぞれの受容度を官能評価によって測定した。日本人が試食した韓国料理はぜんまいのナムル, ズッキーニのジョン, プルコギ, ジャプチェなど8品目で, それぞれ韓国醤油と日本醤油で調味した。汁物は, こんぶ・かつお節, 煮干, 干しだらのだし汁を用い, それぞれ韓国味噌と日本味噌等で調味した4品目の計12品目である。韓国人が試食した日本料理は肉じゃが, すき焼, 鯛のあら煮, きんぴらごぼうなど7品目と牛丼, 親子丼などのご飯物3品目の計10品目で, いずれも韓国醤油と日本醤油で調味した。使用した醤油および味噌については, アミノ酸を分析した。官能評価は香り, 味, 旨味, 総合評価の4項目について, 5段階の評点法により評価した。パネルは, 韓国, 日本ともに女子学生の各50人である。結果は次のように要約された。日本人の韓国料理に対する評価は, 汁を除き「普通」から「良い」の間に評価され, ほぼ受容されると理解された。韓国醤油に比べて日本醤油で調味したものが高い評価であった。韓国汁に対する評価は, 食べ慣れない干しだらのだし汁を用いた汁は好まれず, 「普通」以下の評価であった。味噌については, 本味噌にくらべて韓国味噌の評価が低く, 香りが好まれなかった。日本料理に対する韓国人の評価は, 「普通」から「良い」の間に評価され, ほぼ受容されることがわかった。ご飯物は「良い」と評価され, 嗜好度が高かった。調味に使用した醤油については, ほぼ同等の評価であったが, 7品目中2品目については, 日本醤油の評価が有意に高かった。