77年間継続調査の行われた秋田地方のスギ天然林において, 成長量と林分構造の推移を調べた。最終調査時の林齢は244年と推定された。調査期間中に2度の間伐が実施された。間伐後10年前後の時点に林分材積定期平均純成長量のピークが存在していた。これは, 高齢級における間伐によって個体の成長量が一時的に増加したことに起因していた。ピークを迎えた後の林分材積定期平均純成長量は大きく減少して, 1回目と2回目の間伐の間で32.2m3ha-1yr-1から6.1m3ha-1yr-1, 2回目の間伐の後で14.9m3ha-1yr-1から3.7m3ha-1yr-1まで低下した。間伐によって林分構造は大きく変化した。もともと上層木とともに多くの下層木が生育する複層林であったが, 間伐によって, 下層木の多くが除去され, 一斉林に近い森林に誘導されていた。各個体の樹高は限界高に近づき, 伸長成長は減退していたが, 肥大成長は, 伸長成長と比べると大きく減退していなかった。高齢級での材積成長は, 伸長成長よりも肥大成長によってもたらされると考えられた。