新潟県内で発見された雄性不稔個体の中で, 雌性にも異常が疑われる新大2号, 新大10号を用いて雌性不稔の発現過程を調査した。両個体とも4月の花粉飛散期に受粉が正常に成立し, 胚珠には正常個体と大きな違いは認められなかった。しかし, 5月下旬から6月上旬にかけて, 胚珠に変化が現れた。雌性配偶体が核分裂を行い, 遊離核を形成する時期に, 2号と10号の雌性配偶体には遊離核が形成されなかった。その後, 2号, 10号の雌性配偶体はともに退化して胚の形成は認められなかった。また, 2号, 10号は種子を形成するがすべてシブ粒, 厚皮粒, シイナ粒であった。新大2号と10号の雌性配偶体の退化過程は類似しており, ともに遊離核が形成されないことから, これらの雌性不稔の原因は胚のう母細胞に異常が生じ, 正常な雌性配偶体が形成されないことが主因であると考えられた。