クロマツのマツ材線虫病抵抗性クローン (川内ク-290号) の実生苗38個体に対して, マツノザイセンチュウ (島原個体群) を用いて接種検定を行い, 抵抗性個体を15個体選抜した。これら15個体を採穂個体として3年間連続して挿し木を行い, 得られた挿し木苗に島原個体群を接種した結果, 各年における健全率は61~71%と年変動が少なく安定した抵抗性を示した。次に, 12の抵抗性クローンの実生苗18個体を対象に, 島原個体群より強い病原性をもつ線虫2系統 (Ka-4と唐津3) を用いて接種検定を行い, 抵抗性個体群の選抜を行った。選抜された9個体から挿し木を行い, 得られた苗木に強病原性線虫 (唐津3) を接種した結果, 健全率は97.7%ときわめて高かった。このように, マツ材線虫病抵抗性種苗生産において, 強病原性線虫の接種検定により抵抗性をもつ採穂個体群を選抜し, それらから挿し木を行う方法は有効であると考えられた。