中部日本のコナラ・アベマキ二次林でのカシノナガキクイムシの初期加害状況を調査した。調査ルート内のコナラとアベマキの総本数は646本と645本で, 穿入を受けたコナラとアベマキは43本と49本であった。穿入木の分布は斜面よりも尾根により集中していた。両樹種とも胸高直径15cm以下のものには穿入孔はみられず, ロジスティック回帰の結果, 胸高直径が大きくなるほど, 穿入木の割合が高くなる傾向が認められ, また, コナラがより多く穿入される傾向が認められた。両樹種とも穿入木の樹液の滲出率が非穿入木よりも有意に高かった。本調査地のようにコナラ・アベマキが優占する場合には, 枯死する樹木は少ない。その原因の一つとして, 寄生を受けた多くの樹木が樹液を滲出させることが関係しているものと考えられた。枯死率は低いが, 高地ミズナラ林からのカシナガの避難場所となる可能性が示唆された。