ヒノキカワモグリガ幼虫によって主幹部に形成される食害痕は, 蛹化直前の老熟幼虫の食害によって形成されることから, その年の成虫羽化数の指標となる。そこで, スギ被害木を伐倒し過去に遡って推定された本種による食害痕数と同一林分で調査された本種成虫のライトトラップによる誘殺数の関係を調査し, 誘殺数がその年の羽化数の増減を反映しているかどうか検討した。熊本県内2箇所のスギ被害林分での, 6~7年間にわたる誘殺調査結果と各林分20本の供試木に形成された食害痕数との関係を検討したところ, どちらの林分でも両者の間には有意な正の相関関係が認められた。したがって, ライトトラップによる誘殺調査は本種羽化数の把握に有効であると結論した。