マツノザイセンチュウを接種したクロマツ苗の庇陰下での病徴進展と, 樹体内でのマツノザイセンチュウの動態を調査した。処理区内の気温や湿度に, 庇陰による変化はみられなかったが, 庇陰下では非接種木の光合成速度が低下した。さらに, 庇陰下のマツノザイセンチュウ接種木では樹脂滲出量の低下や針葉の変色が速く進んだ。一方, 樹体内に侵入したマツノザイセンチュウは, 庇陰の有無に関わらず低密度で樹体全体に広がり, 移動・分散は処理間で差がなかった。しかし, 庇陰下では線虫の密度が1,000頭/g以上の高密度な部分がみられる時期が早まっており, 線虫の増殖が促進されていた。また, 線虫の爆発的な増殖と同時に, 針葉の変色も生じていた。これらのことから, 庇陰下では光合成の低下により前期から進展期への移行が促進され, それにより線虫の増殖や針葉の変色などの病徴が早まったと考えられた。