マツ材線虫病の病原体であるマツノザイセンチュウのマツ属を中心とした針葉樹に対する病原性とその分化, および病原力の種内変異について論述した。本線虫は欧米と東アジアから分離されており, これまでマツ科の7属74種が宿主として報告されている。マツ属の本病に対する抵抗性は種によって異なり, 日本を含むユーラシア産のマツに感受性のものが多く, 北米東部産のマツは抵抗性のものが多い。北米では本線虫種内に樹種に対する病原性が分化していることが示唆されているが, 日本ではまだ分化していないと考えられる。一方, 本線虫には病原力の強さに幅広い変異がある。病原力が異なる要因は明らかになっていないが, 強病原力線虫は弱病原力線虫と比べてマツ樹体内でより速やかに移動・分散して増殖する, 培養菌糸上での増殖が速い, セルラーゼ活性が高いといった傾向がある。