マツノザイセンチュウはマツ材線虫病の病原体であり, Monochamus 属のカミキリムシによって伝播される。日本における主要な媒介者はマツノマダラカミキリであり, マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリとの間には個体群レベルで相利共生関係が成り立っている。本病におけるマツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの役割が明らかにされて以降, 両者の生態および相互関係に関する研究が数多く行われてきた。特にこの10年間は, 人工蛹室の開発, マツノマダラカミキリへのマツノザイセンチュウの乗り移りおよび離脱に影響を及ぼす要因の解析, さらに新たな伝播経路の発見など研究の進展が著しい。そこで本稿では, マツノザイセンチュウの伝播機構に関する研究を最新の情報を中心に総括し, この分野における今後の研究方向について検討する。