スギ人工林への広葉樹の種子散布に対する果実食性鳥類の働きを解明するために, 2002年10月~2004年4月まで, 鹿児島県下の常緑広葉樹林とそれに隣接するスギ人工林内にシードトラップを設置し, 鳥類により散布された種子と結実木から直接落下した果実 (自然落下種子) の種数と種子数を調査した。人工林内に落下した鳥散布種子の種数と種子数は, 自然落下種子よりも有意に多く, またそれらは春~夏季よりも秋~冬季で多く, 2002年秋~冬季よりも2003年秋~冬季で少なかった。人工林内に落下した自然落下種子は広葉樹林との境界部に分布が限られたが, 鳥散布種子は, 林分内に広くランダムに落下した。2003年2~12月まで43日間, 調査地の鳥類相を調査したところ14種の果実食性鳥類が観察され, 秋~冬季にはヒヨドリの出現頻度が最も高かった。これらのことから, 鳥散布種子の種数, 種子数, 分布は自然落下種子とは大きく異なり, 果実食性鳥類, 特にヒヨドリが人工林への種子散布者として重要な役割を果たしていると考えられた。