林齢および樹種の違いが森林生態系の有機物動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的に, 関東地方の13, 21, 34, 48, 66, 93年生の同一斜面に隣接したスギ林およびヒノキ林において, 林床被覆率, リターフォールとA0層の乾重, 鉱質土壌の炭素含有量を比較した。年間のリターフォール量はスギ林では林齢の増加につれて減少し, ヒノキ林では林齢にかかわらずほぼ一定となった。ヒノキ林の土壌中に混入した針葉は1.5~7.3Mg ha-1であり, 林齢にかかわらずスギ林よりも多かった。土壌中の針葉量を加えたA0層量はスギ林とヒノキ林で概ね同じとなり, 13~34年生にかけて増加し, 34年生以上で一定となった。リターの滞留時間 (A0層量/年間のリターフォール量) は林齢の増加にともないヒノキ林では短くなっており, スギ林では長くなっていた。土壌の炭素含有量には林齢の増加にともなう一定の変化や樹種による明確な差がなかった。以上のことから, ヒノキ林ではA0層での有機物分解がスギ林よりも盛んであるにもかかわらず, 土壌中の炭素量がスギ林と違わないことから, リターの無機化がスギ林よりも活発であることが示唆された。